パプアニューギニア(以下、「PNG」)政府は、Marape首相が「テロの温床」と呼ぶスラムの存在を終わらせる決意を示しているが、スラム撤去政策は問題に直面している。推定人口約50万人とされるPNGの首都Port Moresbyでは、そのほぼ半数がスラム居住区に住んでいる。その多くは法的土地権利を持たず、基本的公共サービスにもアクセスできず、いくつかの地区は犯罪多発地域として悪名高いという。1月下旬には、警察が「2-Mile」と呼ばれるスラム地区に突入した際、住民と衝突が起き、2人が死亡、多数が負傷している。その後警察は「4-Mile」地区でも立ち退きを実施しようとしたが、住民側が法的異議申し立てを行い、国立裁判所が退去命令の執行停止を出した。現在、この撤去政策は事実上停止しているが、Marape首相は政府が近く恒久計画を発表するとしている。この計画では、無秩序なスラムを正式な土地権利付きの住宅区へ置き換えるという。また、Marape首相は立ち退きの影響を受けた住民に対して謝罪している。長年にわたり、法律を守る勤勉な家族もスラムを住居としてきたことを認めたためである。過去にもスラム住民の立ち退きは試みられてきたが、成功例のモデルとはならなかった。多くの場合、住宅は破壊され、人々はホームレスとなり、空き地に移動するか、親族ネットワーク「wantok」のもとへ移ることになった。スラム研究を長年行ってきた人類学者のHukula氏は、「これらの地区は数十年前から存在するコミュニティである。基本的には、人々は仕事を求めて都市に来ている。Port Moresbyでも、安価な住宅が不足し、住宅を買えない人々がスラムに住み始めた。郊外のスラムでは、地元の土地所有者と何らかの合意や取引をして住むようになったケースもある」と述べ、都市への移住が大幅に増えた一方で、住宅供給が追いついていない状況を指摘した。続けて、「多くのスラムは今や数世代にわたる家族が住むコミュニティとなっており、立ち退きは複雑な課題である。立ち退きだけでは、問題は解決しない。人々は別の場所を探すだけとなる。何世代も住んできた家族は、もはや出身村とのつながりがないことも多い」とも話している。こうした状況を受けて、長年築かれた社会関係も当問題を複雑にしている。首都圏警察司令部の責任者であるSimitab氏は、「2-Mileの退去作戦を指揮することが個人的にも困難だった。私はここで育ったので、2-Mileにも昔の同級生が多く住んでいる。だから、私にとっても非常に難しい仕事であった」といい、立ち退きがいつ再開されるかについては、政治指導者の判断待ちだとしてコメントを避けた。Moresby Southより選出のTkatchenko議員は、「2-Mile地区が長年にわたり犯罪の中心地であった。ほぼ毎晩のように強盗が発生し、女性がレイプされ、市民が襲われ、車が盗まれた。それが20年近く続いている」と述べた。警察が銃撃された事件をきっかけに、警察が犯人の引き渡しを求めた最後通告を住民が拒否したことで事態が悪化したという。Hukula氏は、「スラム関連犯罪は問題だと認めつつも、立ち退きでは根本原因は解決しない。スラムの住民すべてが犯罪者ではない。清掃員や運転手など都市を支える低賃金労働者も多く住んでおり、退去によって仕事や学校に行けなくなる人もいる」と強調した。しかし、人口爆発により、同じ地域の出身者ではない住民が増えたことで、社会のバランスを維持することが難しくなっている。同氏は、「コミュニティ指導者や村裁判所が、政府と住民の橋渡し役として重要であり、支援されるべきである」とも述べ、政府ができる重要な対策として、すべての国民が利用できる手頃な住宅を整備することを挙げた。(Radio New Zealand/MAR10, 2026)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/589106/drive-to-evict-png-settlement-communities-runs-into-problems
パプアニューギニア
【経済・社会動向】
スラム撤去政策が問題に直面(パプアニューギニア)
2026.03.17