作品
漫画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』シリーズ 武田一義 著 / 原案協力 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)白泉社 2016.8.5
レビュー
フィリピンの南東およそ800㎞の海上に浮かぶパラオ諸島。その南部に位置するわずか13㎢の小さな島、それが本作品の舞台となったペリリュー島だ。
太平洋戦争末期のペリリュー島では、日米5万人の兵士による惨たらしい殺し合いが日常的に行われていた。兵士ながら漫画家を志す心優しい主人公田丸は、そこで何を見て、何を残すのか。
パラオ諸島は、米軍から日本本土を守るための最前線であった。しかし、ミッドウェー敗戦以降の日本の戦況は悪化し、サイパン、グアム、ついにフィリピンが米軍の手に落ちた。徹底持久の命が下るなか米軍の上陸作戦に耐え続けるも、ついにペリリュー島も陥落した。
「いつか必ず日本の助けがくるはずだ!」。そう信じることも虚しく、田丸ら日本兵は食糧や武器などの物資を絶たれた。殺しや飢えが彼らを追い詰める。
彼らの日常とは何か。そこで彼らはいったい何を思ったのか。多くの仲間が死にゆき、多くの敵を殺し、常に死と隣り合わせの環境で必死に生きようとすること。祖国の家族を思い、無事に日本へ帰れる日がくるのだろうか。そんなことを考えながら、日々を過ごしていった。
本作は、かわいらしい絵の中に戦争の悲惨さをリアルに描写しており、真実の戦争を知る上で必読の一冊だ。
年々、戦争経験者が減っていく中で、「戦争をしてはいけない」、ただその言葉だけでは想像も理解もし得ない生々しい現実を、私たちは繰り返されるべきでない真実として受け止める必要がある。(PICインターン K.K)