2007年に創設されたRSE制度は、加盟する太平洋諸国からニュージーランドに短期的に労働者を受け入れる制度である。ニュージーランド政府にとっては、一部の分野における深刻な労働力不足に対処するための画期的な解決策だ。一方、太平洋諸国出身の労働者にとっては、海外で4倍、5倍の収入を得ることができ、家族を養うことができるというのは、見逃せない機会となる。果たしてこれは両社にとって良いことづくめなのかというとそうでもないという考え方もある。マッセー大学太平洋研究政策センターの共同ディレクター、Scheyvens教授は、この制度によって太平洋諸国が被る経済的・社会的損失については、十分な議論がされていないと指摘する。Scheyvens 教授は、この制度が "未熟練労働者 "とみなす人々は、太平洋諸国の中核として重要な役割を果たす可能性があると言う。自分の家族へ健康的な食料を提供し、市場で食料を売ることができれば、それは良い生計手段であると同時に、自国の食料安全保障にも貢献することになる。コロナ感染拡大がおさまり国境規制が解除された際、ニュージーランドとオーストラリアは太平洋地域から4万8000人の季節労働者を受け入れた。しかし、島々にとっては、熟練労働者の損失が目立った。実際にこの制度を利用して、サイクロンによって破壊された自宅の修繕費や、子どもの大学の授業料を賄った人々もいることは事実だ。しかし、何カ月も何年も家族と離れて暮らすことには落とし穴がある。昨年発表された世界銀行の調査では、ジェンダーに基づく暴力、人間関係の破綻、婚外恋愛の増加など、この制度がもたらす社会的影響が強調されている。RNZ太平洋地域記者のLewis氏はRSE労働者と過ごした経験から、労働者と雇用主は、この制度が母国に与える経済的・社会的負担を認識していたという。Lewis氏はこの制度はまだ始まったばかりであり、ニュージーランドが文化的に適切なサポートを提供するには、まだまだ長い道のりがあるとしている。(Radio New Zealand/MAY20, 2024)
太平洋地域
【経済・社会動向】
太平洋地域の首脳、RSE(Recognized Seasonal Employer 承認季節労働者)の流出を懸念(太平洋諸島)
2024.05.27