4月11日に発表されたアジア開発銀行(ADB)のアジア開発展望(ADO)によれば、Covid-19パンデミック後に企業活動が本格的に再始動したことにより、2023年の太平洋地域の経済成長率は平均3.5%であった。「2024年には3.3%、2025年には4.0%の成長が予測されている。この見通しは、域内最大の経済大国であるパプアニューギニア(PNG)の鉱業部門の見通しが改善されたことによる。しかし、Leah Gutierrez ADB太平洋局長は、「大規模な建設プロジェクトと観光が引き続き多くの太平洋経済圏の成長を牽引する一方で、見通しに対するリスクも残っている」と述べた。Guteierrez氏は、「この地域が成長を達成・維持するためには、 安定した送金の流れ、労働力格差への対処、財政維持と長期投資のバランスなど、的を絞った政策が緊急に必要である。各国政府は災害の脅威の増大や気候変動の影響など対する回復力を高める方法を見つけなければならない。」と述べた。ADOによれば、太平洋地域のインフレ率は、2023年に3.0%まで緩やかになった後、2024年には4.3%、2025年には4.1%まで上昇するという。世界的な一次産品価格の変動は少ないものの、多くの国では国内要因が物価上昇圧力となってくる。
●パプアニューギニア(PNG)
PNGでは、資源部門の生産減少により、2023年の成長率は2.0%に鈍化した。外国為替規制と頻繁な電力供給停止も、その他の経済活動を減衰させた。 Porgera金鉱山の生産再開により、2024年の成長率は3.3%、2025年には4.6%に加速するだろう。今年1月の暴動の影響とビジネス環境の悪さが、引き続き見通しを曇らせている。成長を妨げる電力供給の障害に対処するためには、再生可能エネルギーの利用拡大や民間部門の投資を含め、電力部門の財政的持続可能性と発電インフラを改善するための改革が必要である。
●フィジー
域内第2位の経済大国であるフィジーでは、2024年も観光と海外送金の増加が成長の主な原動力となるだろう。成長率は2024年に3.0%、2025年にはさらに2.7%まで鈍化すると予測されるが、これは主に旅行需要の鈍化と観光業の受け入れ能力の限界が予測されるためである。観光産業の成長を維持するためには、投資を促進し、特に離島での観光活動を推進し、観光市場の異なる需要を取り込むことが必要である。
●ソロモン諸島
ADOは、2023年のパシフィック・ゲームズに関連する事業が一段落するにつれて、ソロモン諸島の成長率は2024年と2025年の両方で2.2%とやや緩やかになると予測している。公的債務は増加するものの、インフラ整備と財政赤字を賄うために政府の限度額の範囲で抑えられるとし、インフレ率は世界的なトレンドに沿って減速すると予測している。財政の持続可能性と長期的な投資ニーズのバランスを取ることが、現在の課題である。
●バヌアツ
バヌアツの経済成長率は2024年に3.1%、2025年には3.6%まで上昇すると予測されている。観光業の成長と2023年のサイクロン被害からの復興に依存すると予想されている。報告書では、バヌアツは気候変動による災害の激しさと頻度が高まる中、災害対策に必要な資金を調達する新たな方法を見つけなければならないとしている。
●クック諸島、サモア、トンガ、ニウエ
観光業と建設業(主に公共インフラプロジェクト)が、当面の南太平洋経済の成長を支える。クック諸島の成長率は2024年に9.1%に達し、2025年には5.2%に減速する一方、サモアでは観光業と建設部門の拡大により、2024年に4.2%、2025年に4.0%の成長が見込まれる。トンガでは、現在進行中の建設事業と対気候変動強靭性への投資が引き続き成長を支え、2024年には2.6%、2025年には2.3%と予測される。ニウエの2024年の経済は、観光業の回復により改善した。しかし、観光客の受け入れは、パンデミック以前のレベルを大きく下回っている。ADBの報告書によれば、成長を維持するためには、地元の労働力不足に対処する必要性と海外送金額を維持する必要性とのバランスをとる政策が必要であるとしている。
●北太平洋
北太平洋地域の経済は、パラオへの旅行者数が増加し、ミクロネシア連邦(FSM)とマーシャル諸島では、パンデミックによる移動制限のない最初の1年間で、企業活動が回復したことから改善した。ミクロネシア連邦経済の2024年の成長率は3.1%と予測され、2025年には2.8%にやや減速する。マーシャル諸島経済は、2024年に2.7%、2025年に1.7%拡大すると予測される。パラオは観光業と建設業に牽引されて成長が再加速し、2024年には6.5%に達し、2025年には8.0%に増加すると予想される。北太平洋諸国が米国との自由連合協定を更新する際に見込まれる資金援助を活用し、生産的投資を拡大し、公共サービスの質を向上させ、強靭性を構築するためには、公共部門管理の強化が引き続き鍵となる。
●キリバス、ツバル、ナウル
インフラ・プロジェクトの実施は、中央太平洋諸国の経済拡大を促進すると見られる。キリバスの成長率は2024年に5.3%、2025年に3.5%と予測され、ツバルの予測は2024年に3.5%、2025年に2.4%である。
オーストラリアが設立したリージョナル・プロセッシング・センターの閉鎖後は、建設業とサービス輸出がナウル経済の原動力になると見られている。2024年の成長率は1.8%で、2025年には2.0%まで上昇すると予測されている。海面上昇が中央太平洋経済の生活と存続を脅かす中、この脅威を軽減するための早急かつ協調的な取り組みが必要であるとしている。
(Radio New Zealand/APR12, 2024)
報告書リンク
https://www.adb.org/sites/default/files/publication/957856/asian-development-outlook-april-2024.pdf
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/514134/moderate-growth-expected-in-the-pacific-region-in-2024-adb
太平洋地域
【経済・社会動向】
2024年太平洋地域は緩やかな成長が見込まれるーアジア開発銀行報告書(太平洋諸島)
2024.04.22