海が人類の英知の源泉であると考える人は少ないかもしれないが、私たちの歴史と未来は、海における生活によって描くことができる、とカプア大統領は記している。数千年前の私の先祖や太平洋諸島の先住民たちの壮大な航海から、今日のコンテナ船や貨物船が提供する貿易、多国間貿易、安全保障に至るまで、私たちの偉大な飛躍の多くは、海洋を航海するために必要な技術革新によってもたらされた。
今日、食品などの約80%は海路で運ばれてくる。マーシャル諸島や他の多くの国々の国民は、ほぼ完全に海洋貿易に依存している。私たちは海運技術革新の恩恵を受けてきたが、同時に、海面上昇によって国土が蝕まれ、何百万もの人々の健康と経済的安全が脅かされる中、化石燃料の燃焼によって引き起こされる気候変動の深刻な犠牲を目の当たりにしている。多国間貿易からの恩恵を受け続けるためには、全ての国に恩恵があるような環境に配慮した海運技術への移行に舵を切らなくてはならない。海運における二酸化炭素のゼロ・エミッションは、遠い夢物語ではない。このような地球に優しい戦略やその他の戦略の導入を促進する決め手は、技術的な問題ではなく、政治的な問題である。
数週間後、国際海運を規制する、国際海事機関(IMO)の会合が開催される。IMOは、2050年までに海運部門からの温室効果ガス排出をゼロにするという目標を設定することで、温暖化を1.5度に抑えるというパリの目標を達成し、気候変動問題への取り組みを決定する。同様に重要なのは、マーシャル諸島やソロモン諸島など太平洋地域の国々が提案しているように、世界の海運に対する温室効果ガス賦課金が採用可能かどうかを判断することである。これは、主要産業が排出する二酸化炭素に世界的な課税を設定する初めての提案であり、海運部門にとどまらない先例となる画期的なアイデアである。提案どおり、この税収が発展途上国に分配されれば、アフリカやラテンアメリカなどでの再生可能エネルギーやインフラへの投資、グリーン水素やグリーンアンモニアなどのクリーン燃料の開発を支援し、世界のエネルギー・サプライチェーンにも変革をもたらすだろう。気候変動の影響を受ける国に住む数十億の人々にとって極めて重要なのは、この課税によって、自分たちが引き起こしたのではない気候変動による影響に備え、それに対処しながら、わずかではあるものの二酸化炭素排出量を削減する手段を手に入れることができるということ。IMOの目標をパリ協定に適合させるため、今、大胆に行動することは、海運業界にとって、変革を導き、すべての関係者が公平で適切な時期に環境に配慮した技術に移行できるようにする機会となる。(Radio New Zealand/JUN21, 2023)