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PACIFIC ISLANDS NEWS [ 太平洋諸島ニュース ]

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海を守れば、気候危機の解決につながる (フィジー)

(以下、持続可能な海洋経済に関するハイレベル・パネルのメンバーであるフランク・バイニマラマ フィジー首相によるスピーチ)
5年前、私はCOP23の議長として、人類がこれまでに直面した最大の課題である気候変動に対処するため、世界的な連合を呼びかけた。それ以来、世界の指導者たちは、パリ協定に沿った排出量の削減とネットゼロの目標設定に向けて前向きな一歩を踏み出してきた。しかし、科学的に明らかなように、気候変動を抑制するための世界的な取り組みは十分なスピードで行われているとは言えないのが現状だ。フィジーのような国は、海面上昇、より強い熱波、より異常なサイクロンによる壊滅的な影響にすでに直面している。各国は気候変動と戦うためにあらゆる手段を用いるべきだが、多くの国々は「海」という重要な手段を見逃している。フィジーの人々は、海洋での取り組みが気候変動対策につながることを理解している。しかし、主要な気候変動サミットでは、海洋が後回しにされることがあまりにも多い。エジプトで開催される国連気候変動サミット(COP27)に向けて、各国は海洋を気候変動対策の中心に位置づけるべきと考える。海洋は、人間活動によって放出された余分な熱の90パーセントと、人間が排出したCO2の25パーセントを吸収し、地球の気温を和らげる上で重要な役割を果たしている。また、再生可能エネルギー、沿岸生態系の保護と回復、海洋産業の脱炭素化、海洋からの持続可能な食料確保など、海洋を基盤とした気候変動対策は、2050年までに地球の気温上昇を1.5度に抑えるために必要な年間温室効果ガス排出削減量のほぼ4分の1を提供できることが調査で明らかになっている。さらに、海洋ソリューションは、各国にとって賢い投資となる。海洋を利用した気候変動対策への投資は、今後30年間で当初の投資額の少なくとも5倍の経済的リターンをもたらすことがわかっている。マングローブやサンゴ礁などの生息地に投資することで、マングローブで650億米ドル、サンゴ礁で40億米ドルを超える年間暴風雨および洪水防止効果が得られる。フィジーでは、マングローブ林の保護、劣化したマングローブ林の修復、そしてさらなる損失の防止を目的とした「マングローブ生態系政策」などの取り組みを実施している。このような「ブルーカーボン」イニシアティブを、気候変動対策とネットゼロエミッション達成のための長期戦略に組み込んでいる。フィジーは、他の太平洋諸国4カ国とともに、パシフィック・ブルー・シッピング・パートナーシップを通じて、2030年までに国内の海運部門の排出量を40%削減し、2050年までに完全に脱炭素化することに取り組んでいる。海洋を利用した再生可能エネルギーも、十分なスピードで実施されていない解決策の一つだ。洋上風力、太陽光、波力・潮力などのエネルギー源は、この危機の根本原因である陸上での化石燃料の燃焼に取って代わらなければならない。各国が協力すれば、2050年までに陸上と海洋の両方で、排出量ゼロを達成することができる。しかし、多くの途上国やフィジーのような小さな島国にとって、裕福な国々が気候変動対策のための資金を提供しなければ、ネット・ゼロ・エミッションを達成することは不可能だ。また、必要な気候変動への適応策を実施することもできない。海洋に関する持続可能な開発目標(SDGs)は、SDGsの中で最も資金が不足しており、その結果、各国は海洋が提供する手段を最大限に活用する機会を逸している。富裕国は、海洋を基盤とした気候変動対策を推進する上で、脆弱な国々を支援する道義的責任と自己利益の両方を負っている。私たちは、2つの可能な未来に直面している。ひとつは、海洋が気候危機に対する重要な解決策となる未来、もうひとつは、海洋が認識できないほど劣化してしまう未来だ。前者のために緊急に行動を起こさなければ、後者は避けられないのだ。(Pacific News Association/Nov02, 2022)
https://pina.com.fj/2022/11/02/if-we-protect-it-the-ocean-can-help-solve-the-climate-crisis/