太平洋の深海で採鉱されるポリメタリック・ノジュールには、マンガン、ガネニッケル、銅、コバルトなどの金属が含まれており、リチウムイオン電池の製造に不可欠な素材として注目されている。ナウルは先日、国際海底機構(ISA)の規則を発動し、領海内で2年以内に海底資源の採掘を開始することを認めた。海洋科学者や環境保護団体、太平洋地域の市民団体はこの動きを批判し、採掘開始の一時停止を繰り返し求めている。しかし、ナウルのライノル・エニミア大統領は、国連総会において、この分野は気候変動との戦いに不可欠な要素であると述べ、これらの多金属ノジュール資源へのアクセスは、クリーンエネルギーへの移行や、循環型経済の構築に不可欠だしている。ナウル、キリバス、トンガ、クック諸島の4カ国は探査ライセンスを承認し、海洋の健全性を求める他の太平洋島嶼国の動きに逆らっている。フィジーのバイニマラマ首相は、総会の傍らで開催された自然保護イベントで、自国が深海採掘を禁止していることを明らかにした。
「人類は自然の上にいるのではなく、自然の一部なのです。そうでないと考える傲慢さが私たちを苦しめているのです。」とバイニマラマ氏は述べた。フィジーは、海洋の100%持続可能な管理を目指し、30%を海洋保護区に指定し、フィジー海域での深海採掘を禁止している。
一方、エニミア大統領によると、それぞれの国には深海採掘の可能性を探る権利があるという。「このプロセスにより、ナウルをはじめとする開発途上国が新しい産業に参加しても利益を享受できないことがあまりにも多かったという歴史的背景を踏まえて、貴重な資源にアクセスすることができるようになる。」と主張する。しかし、海洋科学者たちは、地球上で最も研究が進んでいないとされる最深部の海洋について、より多くの研究が行われるまで採掘活動を休止すべきだと訴える。そして、採掘を支持する人たちは、海底のノジュールは電気自動車のバッテリーに不可欠だとするが、再生可能エネルギーの金属需要を満たすためには、すでに廃棄物として処理されている古いバッテリーのリサイクルの方が可能性があるとしている。
ニュージーランド政府は、海底資源の採掘に関する環境規制の整備に力を入れているが、先日開催されたIUCN世界自然保護会議での海底採鉱に関する一時停止期間の投票では棄権したため、議会で多くの批判を受けた。外務大臣のマフタ氏は、「英国、米国、オーストラリア、カナダ、フランスと並んで、私たちの立場は、ISAを通じて規制の枠組みを構築し、各国が主権を持って深海採掘を決定する際の指針となるよう、非常に強力な方法で働きかけ続けることです。」と述べている。
太平洋地域環境計画の事務局が最近、深海採掘の10年間の一時停止を勧告したことは、ほとんどの太平洋島嶼国政府の立場を反映している。太平洋で複数の探査ライセンスを持ち、ナウルと密接な関係にあるDeepGreen Metals社と合併して誕生した鉱山会社は、これらの動きを受けてか、今月に入って株価が急落している。(Radio New Zealand/SEP29, 2021)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/452543/nauru-s-seabed-mining-pitch-out-of-step-with-pacific