近年、太平洋諸島の国々のマグロ漁から得る収益と、それに関する管理力は高まりつつある。これは長年の努力と協力の成果であり、太平洋諸島のマグロ漁は世界において最も持続可能な形態であることを示しており、世界マグロデーは、太平洋諸島の国々が特に誇りに思うことができる日である。
世界マグロデーは、マグロの種の保護管理と持続可能な漁の大切さを訴えることを目的として2016年12月国連総会において公式に設定された。現在96か国以上がマグロ漁をし、マグロが貴重な食料となっており、西・中央太平洋地域は世界のマグロ漁獲量の30%を占める。そして太平洋諸島の国々は例えば太平洋諸島漁業機関(FFA)などマグロ漁における最も力のある組合を有している。FFAは40年にわたり太平洋諸島17か国を主に以下の分野で支えてきた。1)法令遵守監視活動 2)漁業方針とその管理 (漁業区域、漁船に付ける識別記号の大きさ、漁に使用する器具の仕様など)また、漁ができる時期、区域など、労働者の人権に関しても国際労働機関の要件に沿うように管理しこれら項目を漁業ライセンス取得のための条件としてきた。これらの協力に加えて、FFA加盟国は巻網漁、延縄漁に関して補足的な条件も加えて運用し、これには漁港外で積替えの禁止も盛り込んで世界でも最も厳しい条件となっている。3)漁業開発。
これまでこの区域で独占的に漁業活動をしてきた諸外国船は近年漁獲高の減少に見舞われている。2010年にはこの区域でのFFAの漁獲高は全体の29%であったが、2018年には様々な努力の甲斐があって48%まで上昇した。この地域での漁業実施に当たりFFAに対して支払われる操業料金は2009年には1億1400万ドルであったのが2018年には5億5400万ドルまで増加した。こうした漁業ライセンス料と操業料はFFA加盟国にとって重要な収入源となっている。
2018年における漁業従事者数は22350名で、前年から3%増加した。2010年から安定的に雇用は増加しており、水産加工産業における雇用も大きく経済に貢献している。水産加工産業従事者が多いのは、PNG、ソロモン諸島、フィジー、マーシャル諸島などだ。このうちの75%が女性である。これらの成果は、世界におけるマグロ資源に関する著名な科学者らとの幾度もの協議がを経て設定した持続可能な管理レベルがもたらしたともいえる。行き過ぎた漁業を失くし、生物学的に健全な漁業を目指した結果でもある。近年、ビンナガマグロを対象としたはえ縄漁業における漁獲高の減少が問題となっており、17か国は世界レベルでのより強い管理と規制を遠洋漁業国にも訴えている。また、この地域では気候変動の影響、積み替え船の問題、労働問題、音響探査機などの技術を駆使した違法操業などもまだ解決されてはいない。太平洋諸島の国々のリーダーたちは、団結と協力が成果につながる最善の方法であることを理解している。漁業産業においてかつて発言力があったのは船を持つ国々であったが、それが、魚がいる国々に移行してきた。これまでの太平洋諸国の強い協力が無ければ、今のような健全なマグロ漁の実現は無かったのだ。(Radio New Zealand/MAY2, 2021)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/441624/world-tuna-day-what-does-it-mean-for-the-pacific
太平洋地域
【海洋問題】
【経済・社会動向】
世界マグロデー:太平洋諸島にとっての意味とは(太平洋諸島)
2021.05.07