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PACIFIC ISLANDS NEWS [ 太平洋諸島ニュース ]

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2018年太平洋島嶼国政治総括(太平洋島嶼国)

大国の力関係の渦中に巻き込まれ、例年よりも世界的な注目が集まった2018年は、太平洋島嶼国にとって多忙な1年であった。多くの新たな政策、パートナーシップ、加えて圧力もこの地域にもたらされた。RNZのJohnny BladesとJamie Tahanaが、世界が太平洋島嶼国を見出した2018年について総括する。

大局的な見地から見ると、2018年は中国のこの地域に対する高まる影響力、また、それに対するオーストラリア・ニュージーランド・アメリカ合衆国の反応によって支配された1年であったと言える。急に、世界の注目を集め、また、世界からの様々な代表団が訪問するようになったのだ。中国のこの地域への進出の高まりが西側諸国を焦らせた。

太平洋島嶼国は次々に国賓待遇で北京に招かれ、一帯一路構想に加わる調印をしたが、オーストラリアやアメリカなどの国々からはこれは借金漬けにする罠であるとの警告が発せられていた。
2018年オーストラリアとニュージーランドは精力的な中国に反応して対太平洋島嶼国の政策をそれぞれ開始した。これらには、支援、新たな外交要員配置、奨学金、インフラ整備計画、健康管理プログラム、インターネットケーブルや電力計画なども含まれており、加えて、米国も加盟してのパプアニューギニアのオーストラリア空軍基地計画も対象となっていた。

こうした大国の太平洋島嶼国でのチェスの駒争いの外で、太平洋島嶼国同士が互いにゲームをしていたともいえる。国としての独立から数十年経て、太平洋島嶼国のリーダーたちは、自治の力と自信を深めていた。とはいえ、政治的に大きな問題が解決されたということでは必ずしもない。
以下、各国について2018年を振り返る。

パプアニューギニア
ポートモレスビーで開催されたAPECにより、太平洋島嶼国で最大の国であるパプアニューギニアの奮闘ぶりと、地政学的に増している重要性が注目された。ホストをすることで精いっぱいだったオニール政権は、サミット会議における米中の緊張をほぐすことはできなかった。過去7年間政権についてきたオニール氏への風当たりは強く、これまでようやく過半数の議員からの支持を得てきたものの、オニール政権は資金と政治資本が不足し始めている。また、パプアニューギニア内では社会的崩壊の兆しがある。自然災害や人的災害が多い中で基本的な生活基盤さえままならない中で、国民の政治に対する不満は沸点に達している。それに火をつけたのがAPECにおけるマセラッティの40台の購入だ。


フィジー
クーデター後、選挙によって当選したバイニマラマ首相は50.02パーセントというごく僅かな差の過半数で、今年の選挙で当選した。短い選挙期間の中で、対立政党Social Democratic Liberal Party代表のRabuka氏は、投票日の数日前にフィジーの反汚職機関から法的な申し立てをされるという事態に巻き込まれた。申し立ては選挙日寸前に取り消されたが選挙後、野党はこの選挙の有効性について問題視している。選挙では10名の女性議員が当選し、太平洋島嶼国にとって女性の地位向上の良い例となっている。国際的ステージにおいて、バイニマラマ氏は気候変動に関して大国を非難して脚光を浴びている。国連人権会議での議席を得るなどして、フィジーは国際的なイメージを取り繕ってはいるが、その一方で気候変動対策の計画内容や子供の人権、性の不平等などについては批判を受けている。


ニューカレドニア
1998年に調印されたヌメア協定により、2018には独立を問う国民投票が実施された。現状を肯定する投票者は予想されたよりも少なく、この地の土着の人々の独立への要望が大変根強いということが明らかになった。反独立派の、今後の2階の国民投票(これは協定に明記されている。)を阻止する動きに暗雲が垂れ込める結果となった。先週のパリでの会談の結果、国民投票は再度実施される方向だ。反独立派の最大政党であるCaledonia Togetherの代表Gomes氏は、ヌメア協定からの解放を模索しなくてはならないとしている。


バヌアツ
サルワイ首相は2019年には任期3年目となり、バヌアツで就任期間が最長の首相となる。サルワイ政権は政治改革の大きな目標を掲げているが、最近はその速度が弱まってきている。サルワイ政権は汚職で辞職した副首相のNatuman氏を失ったばかりでなく、その後の混乱もあり、Vanuatu Leaders Partyが連立から抜けて、議席を減らしてしまった。サルワイ首相はなんとかいくつかの改革を実施しているという状況だ。次回の総選挙は2020年に予定されている。国際政治においては、外相のRegenvanu氏が、バヌアツの利権のために気候変動とウエストパプアについて言及している。気候変動についてRegenvanu氏は、世界的な石油会社とその国に対して法的措置をとることを考えていると警告を発している。

仏領ポリネシア
仏領ポリネシア政権の中心で30年活動していた独立賛成派のOscar Temaru氏は、公金流用の容疑で裁判にかけられており、議会から追放された。この容疑は2009年の監査から発覚したもので、主権を主張し、核実験を非難するラジオ局に対する予算の分配が問題視された。一方、フランス議会は仏領ポリネシアの核実験被害者からのさらなる慰謝料の要求に対応することを決定した。今年この地域で最も興味深いのは、タヒチの中国領事館についてだ。2017年2月末までに引き渡しを要求されていたにもかかわらず、中国公使は居座り、我関せずとした態度をとおしている。

サモア
2018年長年首相を務めるトゥイラエパ氏は、政府の新たな税制政策について、サモア最大の教会と対峙した。新たな税制では、教会の牧師と教区の教会から所得税を徴収することとなった。
会衆派教会はこれを拒否し、政府は法的措置をとった。多数の教会長が納税を拒否した罪に問われて法廷に引きずり出された。教会は、さらに、この国で極めて深刻な事態を呈している家庭内暴力を抑止する役割も担っている。

ソロモン諸島
Sogavare氏が失脚して以来、Rick Hou氏が安定的なかじ取りをしている。2018年に議会は2重市民権制度、反汚職法などを含む多くの法案を成立させたが、これらがどの程度有効となるのかを見守りたい。
How氏はこの国の外交政策を微調整し、Sogavare氏の置き土産ともいえる西パプア独立への熱心な支援を打ち切った。しかし、How政権が安定するかどうかは確固としてはおらず、選挙後の駆け引きが予想される2019年の投票にも左右される。


トンガ
2017年末の選挙でポヒヴァ首相が政権に返り咲きいた。2018年2月にはサイクロンGITAがトンガを襲い、旧議事堂を破壊するなど、国中に被害をもたらした。おのずと、この被災からの回復と復興が政治家の主たる仕事となった年であった。トンガの上院議員で元首相のTu’ivakanoが収賄と資金洗浄の容疑で逮捕されるなどの、事件もあった。また、外交大臣のLavulavu氏が文書偽造と詐欺の容疑で逮捕された。2018年6月には首相と7名の内閣議員の弾劾を求める3000の嘆願署名が提出された。さらにこの嘆願では過去3年間のポヒヴァ首相の支出に関する緊急監査も要求されていた。

マーシャル諸島
前政権からの仕事が引き続きなされ、特に、前外務大臣のTony de Brum氏の路線を引き継いで、ヒルダ大統領は、マーシャル諸島のような国にとってはとても遅く感じられている、気候変動に対する世界的な行動を提唱し国際舞台で忙しく活動した。2018年になって、この気候変動に対する世界的な対応はさらに求められている。というのも、環礁の浸水、干ばつ、エルニーニョなど様々な脅威が表れているからだ。
国内政治はハイネ大統領にとって安定したものではなかった。先月ハイネ大統領は、選挙への中国の影響を批判し、また、対立議員が買収されているなどと非難し、不信任動議からぎりぎりのところで生き延びた。抵抗勢力はハイネ大統領が法定通貨として仮想通貨を導入しようとしたことは国家の評判をけがしたとして非難している。


太平洋諸島フォーラム
2018年9月PIFの年次会議開催国であるナウルに注目が集まった。この会議は開催前から、オーストラリアの公共放送であるABCが報道規制をされたことから論争が起きていた。
抱えていた問題が表面化したサミットでもあった。フィジーは出席を拒否。ニュージーランドのジャーナリストDreaver氏はナウルの難民にインタビューを試みたことで短期間拘留された。中国と台湾の主導権争いが表面化し、ナウル大統領主催の会議から中国側が急遽退出という事態まで起きた。こうした混乱に加えて、オーストラリアは気候変動に関する決議内容を骨抜きにしようと試みた。バヌアツとツバルの代表はオーストラリアを公に避難した。安全保障に関する協定が最終的には採択されたのみで終了した。政治的激流の中でのPIFの対応努力が浮き彫りにされたサミットだった。

ナウル
国内的にはナウル政府は抵抗勢力の兵士を罰することを推し進めた。ナウル前大統領を含むいわゆるナウル19を無罪放免にしたことをアピールした。このナウル19は、3年前に反政府活動で裁判にかけられていた。9月にこのグループは裁判の期間が長すぎ、政府が適切に対処していないとして訴えていた。
裁判官のMueche氏は、政府の一連の対応に関して、法を侮辱する恥ずべき行為と非難した。しかし、すでに有罪判決を受けて、控訴棄却された3名はいまだに収監されている。


クック諸島
2018年6月の選挙でプナ首相が僅差で再選されたが、議員の一人が辞職し、もう一人は病気で国外にいるという状況である。ラロトンガ水レティキュレーションシステムはこの5年間工事をしてきたが2019年の終わりには完成する予定だ。しかしその前に、中国の問題が解決されなくてはならない。問題は、第一段階の工事に携わった中国の企業がクック諸島政府との契約に記載されている工事内容を実施していないことだ。第二段階はニュージーランド企業が請け負っているが、ニュージーランドの企業も中国企業の不履行を非難している。他方、クック諸島政府は自国に利をもたらすように、EUなどに漁業協定を結び、諸外国に漁獲量の制限を設けるようにと、働きかけを行っている。

ニウエ
ニウエは、タランギ首相の下、2018年は独自の路線をとり、中国の一帯一路構想に調印し、憲法記念日の祝賀の折にはニュージーランドの国家を斉唱せず、ニュージーランドから会計の監査を受けることも拒否した。タランギ政権は安定しているが、ニュージーランド会計検査院長官から問題視された件は新年までもつれ込むであろうし、同様に、ニウエにおける中国の影響についても不確かなままである。

(24 December 2018 Radio New Zealand)