数十年にわたり、コーヒーはパプアニューギニア(PNG)の多くの農村経済の要であり、家族を支え、厳しい環境下にある国を世界市場と結び付ける作物となってきた。国際的なコーヒー価格が前例のない水準まで急騰し、農家が一時的な利益を享受する中、PNG政府内では農家がこうした価格高騰の恩恵を十分に享受できていない原因として、既存の問題点や長期にわたる課題解決に向けた取組みが必要であるという意見が浮上している。70%にも及ぶコーヒーの驚異的な価格高騰は、ブラジルやベトナムなどの主要生産国の悪天候による世界的な供給不足が主な要因であり、PNGがその不足分を補っているのが現状である。コーヒー産業に従事するPNGの高地の農村部の大多数の世帯にとって、小規模農家の収入が増えることは、生活水準の向上、教育へのアクセス改善、経済的な安定につながっている。PNGのGDPは2025年に4.7%成長すると予測され、主にコーヒー、ココア、パーム油の輸出が牽引しており、PNGが抱える慢性的な外貨不足問題の緩和にも重要な役割を果たしているとみられている。しかしこうした数字は良好でも、多くのコーヒー農家が直面する厳しい現実はほとんど変わっていない。コーヒー豆の産地Nivi村は、トヨタの頑強でタフなランドクルーザーでも、少量の雨の後でさえ数時間かけて到着するような谷間にある。村までの道が悪く、農民たちは 40kgのコーヒーの袋を背負い、4時間かけて最寄りのトラックの停留所まで歩いている。こうした状況にもかかわらず、この村では年間平均5,000袋のコーヒーが生産されている。コーヒーで外貨を稼いでいるにもかかわらず、農民は必要な支援を受けていないのが現状で、輸送インフラや農家支援への長期的な投資が課題となっている。こうした支援への柱となるのが、PNG農業商業化・多様化プロジェクト(PACD)である。このプロジェクトは、PNG農業行政機関であるコーヒー産業公社(CIC)が管理し、世界銀行とPNG政府の共同資金で実施されている取組みで、農民の自立支援と生産性向上を目的としている。そして、この生産性向上の最大の障害となっているのが、栽培地への整備されていない道路環境である。6年前、当プロジェクトで「コーヒー道路」と呼ばれる道路が建設された。これはコーヒー栽培地域へのアクセスを改善する短い区間の道路で、コーヒー農家による輸送時間を大幅に短縮した。また、PACDは、コーヒー研修センターや貯蔵庫、湿式精製所など、コーヒー豆の品質と価格の向上を支援する重要な設備も支援している。こうした取組みにより、現在の状況は前向きだが、害虫管理、一部の地域での老木による生産量減少、遠隔の農場からの輸送といった継続的な物流課題などの解決すべき問題が依然として残っている。しかし、高価格が継続し、このような既存の輸送インフラと新規設備への長期的な投資が継続される限り、PNGのコーヒー農家の将来は、過去数年で最も明るいものとなっている。(Radio New Zealand/JUN23, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/564890/how-soaring-prices-are-brewing-prosperity-for-png-s-coffee-farmers
パプアニューギニア
【経済・社会動向】
コーヒー価格の急騰が農家に繫栄をもたらす(パプアニューギニア)
2025.07.01