パプアニューギニア(PNG)とフランスとの間で最近締結された一連の閣僚級合意は、PNGの外交関係において重要な進展を意味する。これには、両国の国益の一致が背景にあるとみられる。主な合意内容を分析すると、PNGの戦略的多様化とフランスの太平洋地域における長期的戦略を反映した、相互利益に基づくパートナーシップが浮き彫りとなっている。しかし、PNGの多くの人々はこの合意に注目し、PNGはどこまでこの合意を必要としているのかとの疑問を投げかけている。例えば、Marape首相はフランス企業向けにポートモレスビーに特別経済区(SEZ)を提案し、同時にポートモレスビーのVariarata国立公園の展望台にMacron大統領の名前を付けることを発表し、PNG国内で多くの批判を招いている。このSEZ提案は、数十億ドル規模のLNGプロジェクトの将来を確固たるものにすることと戦略的に連動している。Macron大統領がTotalEnergies社との協力を通じて、プロジェクトのスケジュール維持を個人的に約束したことは、PNGの最も重要な経済プロジェクトの一つに不可欠な安定性をもたらすこととなる。また、フランスにとっては、同国の大手企業にとって重要なエネルギー投資を確保するとともに、アジア太平洋地域において戦略的経済基盤を強化することとなる。他方、安全保障分野においてPNGは、240万平方キロメートルに及ぶ排他的経済水域の監視という大きな課題に直面しており、違法、無報告、無規制(IUU)の漁業に対しては脆弱な状況となっている。そこで、フランスとのシップライダー協定の締結は、フランスの海軍資産を活用して PNG の海上監視能力を強化するといった実用的な戦力倍増策となる。この動きは、空と海の協力に関する防衛協議の計画と相まって、PNG の安全保障体制の多様化にもつながる。またフランスにとっては、ニューカレドニアや仏領ポリネシアのような領土を有する常任理事国として、地域安全保障作戦への参加は、インド太平洋地域における安定への役割とコミットメントを強化するもので、外交的影響力を高めるための手段でもある。
このPNGとフランスのパートナーシップは、太平洋地域において高まる地政学的競争という大きな文脈の中で進展している。つまり、この地域における中国の急速な台頭と、経済・軍事面での支配力の高まりに対して、西側諸国は戦略的状況を再構築することを試み、新たな緊急性を帯びた関与を促しているということになる。近年、信頼性が大きく低下しているMarape首相にとって、これらの合意は国民に提示できる具体的な成果となっている。これにより、彼は「温かい個人的な関係」を通じて、経済的機会と国家安全保障の約束を果たす能力を持つ有能な政治家としての評価を構築し、PNG国内での政治的立場を強化することができるかもしれない。(Radio New Zealand/JUN17, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/564335/decoding-png-leader-marape-s-discussions-with-president-macron