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TAMANU OIL [ タマヌオイル ]

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神の木「タマヌ」とは?
現地での生産の様子

「タマヌ」の名前を知っている方はまだそれほど多くないと思います。
太平洋の島々では「ディロ」(フィジー)、「フェタウ」(サモア)、「ビヨッチ」(ヤップ)など、さまざまな呼び名がありますが、日本では「テリハボク」(照葉木)といい、南西諸島や小笠原諸島に自生しています。この木を太平洋の島々では、古くから生薬として利用してきました。島によっては「神の木」あるいは「精霊の木」とも言われ、葉のエキスは目の充血や抗炎症薬として、その果実からとれるオイルは皮膚疾患対策や皮膚を美しく保つために使われてきました。

太平洋の島々で長年の間、このように親から子へと伝えられてきた効能は、きっとみなが納得し、次の世代に伝えるだけの根拠があったのでしょう。
実際、現地ではスキンケア用品などに利用され、販売されたりもしています(注1)。

しかしながらこうした言い伝えは、あくまで現地での「口コミ」の情報で、科学的に「実証」されたものではありません。そこでPICでは、このタマヌオイルに抗酸化力が実際どのくらいあるのか、試験機関に依頼して実証実験することにしました。

(注1)日本でもタマヌオイルは化粧品原料として日本化粧品工業連合会より、化粧品表示名称:テリハボク種子油 成分番号:558078
INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients):Calophyllum Inophyllum Seed Oilとして登録されています。

抗酸化力って?

「抗酸化力」とは何か? これは皆さんよくご存じだと思いますが、ちょっとだけおさらいしておきましょう。
「抗酸化」とは、読んで字の如く「酸化に抗する」ということです。
酸化が起きると鉄がさびるのと同じように、人体でも過度に酸化が起きると細胞の中にある遺伝子にダメージを与えることになります。
人間の肌にとっては、酸化が起きることは老化が進むこと。そこで、その酸化を起こさなくする、起こしにくくする物質を「抗酸化物質」といい、美容クリームやさまざまなサプリメントに使われているわけです。
よく知られているものとしては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、グルタチオン、ポリフェノールなど。どれもおなじみの名前だと思います。

また、さまざまな化粧品製品の中にあるお肌によい有効成分も、放っておけばどんどん酸化が進んで最初にあった効果が薄れてしまい、役に立たなくなってしまいます。 そこでこうした製品の中に「抗酸化物質」を入れることによって、製品自体の酸化を抑えて本来の効果を発揮する「有効期限」を長持ちさせる……抗酸化物質にはそんな役割もあります。

タマヌオイルの抗酸化力試験

さて、タマヌオイルに関する太平洋の島での言い伝えを聞いていると、どうもかなり高い抗酸化力がありそうだ……そんな視点から、今回の試験を実施することにしました。抗酸化力の科学的実験の方法はいくつかありますが、今回PICで行ったのはORAC法というやり方です。
詳しく知りたい方は(注2)をご参照いただきたいのですが、近年わたしたちの身近な食品の抗酸化力テストなどを中心に、精度の高い測定方法として一般的になってきている数値化の方法です。
今回は太平洋の島の別々の生産者が生産した3つのタマヌオイル製品を、高い抗酸化力があるとして化粧用オイルなどに広く利用されている市販のエキストラバージンオリーブオイル(日本で一般市販されているもの)と比較する形で、ORAC値を測定しました。

表1 タマヌオイルのORAC値

図1 タマヌオイルORAC測定 減衰曲線

エキストラバージンオリーブオイルの20倍以上の抗酸化力が!

分析試験はそれぞれ3回行い、その平均値を出したものが表1です。
市販のエキストラバージンオリーブオイルのORAC値が433μmolTE/100gだったのに対し、A社製タマヌオイルは8841、B社製9473、C社製10456というとんでもない数字が出ました。
これは、単純に計算すると、タマヌオイルがエキストラバージンオイルの20倍以上の抗酸化力を持つということです。
また図1は、時間とともに抗酸化力がどう変化していくかを示したものです。
専門用語で「蛍光減衰曲線」と言いますが、これがあっという間に落ちているBlankと書かれた紫色の曲線は何も塗らなかった場合です。
また30分ほどでゼロに近づいた青い曲線が、オリーブオイルの実験結果を表しています。
そして残る3つがタマヌオイルA,B,C3つの製品の蛍光減衰曲線です。
専門的な話になってしまうので、この曲線の意味に関する詳しい説明は(注3)にまとめておきましたが、要するに、生産者が異なっても、太平洋のタマヌオイルはいずれもオリーブオイルに比べて高い抗酸化力を持っていることがわかります。

正直なところ我々も驚いた結果だったので、念のためいくつかの文献に当たってみましたが、オリーブオイルのORAC値はどの論文でも通常300台から400台ですので、数値としておかしなところはないという結論に達しました。

表1 タマヌオイルのORAC値(表をクリックで拡大)

図1 タマヌオイルORAC測定 減衰曲線(図をクリックで拡大)

(注2)ORAC法について
ORAC法(Oxygen Radical Absorbance Capacity Assay)は1992年にアメリカの農務省(USDA: United States Department of Agriculture)と国立老化研究所(NIA: National Institute on Aging)の研究者たちによって開発された、活性酸素吸収能力、つまり抗酸化力を具体的な数値によってあらわす抗酸化力測定方法である。アメリカではすでに一部の食品でORAC値が表示されており、消費者の購買時の選択基準にもなってきている。ORAC値は標準品としてトロロックス(Trolox:ビタミンEの仲間の抗酸化物質)を基準として抗酸化力を示す。単位はグラムあたりのμmolTE(マイクロモル・トロロックス相当量)。μmolTE/g或いはμmolTE/100gで表記され、この値が高いほど抗酸化力が高い。

(注3)蛍光減衰曲線について
活性酸素(ペルオキシラジカルまたはヒドロキシルラジカル)による蛍光プローフ(Fluorescence probe)の減衰の様子を、時間経過を横軸に蛍光量を縦軸にとって示したもの。抗酸化物質があれば蛍光プローフのペルオキシラジカル酸化がブロックされるので、蛍光量は高い数値を示す。通常は検体物質(今回の場合はタマヌオイル)と、検体物質を入れていないもの(Blank: Negative Control)との対比を行うが、今回の実験では同じ環境下でオリーブオイルの分析試験を行い、タマヌオイルとの比較を行った。なお、蛍光量が長時間持続しているのは、「抗酸化力が長時間持続する」ということではなく、「蛍光プローフのペルオキシラジカル酸化が長時間ブロックされている=抗酸化力が高い」ということである。

今後の課題:現地では抗酸化力以外の伝承も

太平洋の人々が昔から「神の木」と呼び、その効果を伝えてきたタマヌオイルが、実際に高い抗酸化力を持つことが、今回の試験で科学的に証明されました。島々ではこのオイルは食用としては使われておらず、残念ながら食品には不向きだと思われますが、スキンケアなどの美容用途としては、様々な形で利用できるのではないかと思われます。
また、3月に現地調査を行った際に、地元の人々にインタビューを行ったところ、タマヌはたとえば創傷後、日焼け後、或いは眼疾患などにも使われているとのことで、さまざまな薬効成分を含んでいる可能性があります。今後こうした諸点について分析試験を行っていくことで、タマヌが広い分野で活用できる可能性を持っていると思われます。

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