2023年9月、フィジーのランブカ首相は国連総会の演壇に立ち、「和平地帯」構想を概説する演説をした。米国と中国の地政学的な競争に巻き込まれた地域において、ランブカ首相は大国間の対立から自由で、世界にとって有益な太平洋地域を構想した。米国大統領選挙戦が11月5日の投票日に向けて進む中、ランブカ氏の「和平地帯」構想が、2人の候補者、カマラ・ハリス氏とドナルド・トランプ氏に影響を与えることは難しいだろう。太平洋における重要な問題や気候危機、多国間主義について両候補者の見解が異なるかもしれないが、両者とも中国を米国の利益に対する主な脅威と見なしており、この懸念が米国の太平洋地域への関心を継続させることになることは確かである。トランプ氏の政策綱領「アジェンダ47」には、気候危機に関する言及は一切ない。これは、アメリカの労働者や企業に「不公平な経済的負担」が課されていることを理由に、2019年のパリ気候協定からの離脱を表明した当時大統領だったトランプ氏の姿勢と一致している。今回の選挙期間中、トランプ氏は気候危機は「歴史上最大の詐欺の一つ」であるという立場を維持している。共和党綱領の第10章「平和への回帰」では、トランプ2.0の下での米国の外交政策と安全保障がどうなるかが詳しく説明されている。アメリカ第一主義の政策は明確であり、そのリストのトップには「対中政策」が挙げられている。さらに、トランプ流の多国間主義である「同盟関係の強化」は、同盟国が米国のために何ができるかであり、その逆ではない。オーストラリア、英国、米国の安全保障パートナーシップであるAUKUSがどうなるかは、オセアニアにおける米国の軍事的利害に対する経済的または政治的な支援の表明が十分になされるかにかかっている。一方、ハリス氏は2022年の太平洋諸島フォーラム(PIF)でスピーチをして、米国の新たな取り組みを発表した。米国の外交的プレゼンスの拡大、さらなる資金援助の約束、スバ事務所を通じたオセアニアへの米国国際開発庁(USAID)の再設置などだ。重要なのは、ハリス氏が気候変動問題について明確な立場をとり、同危機への取り組みにおける「グローバルな協力」に米国を巻き込み、同盟国とともに独裁政権に立ち向かう意向があるという点である。いずれにせよ、最終的には、米国の大統領候補が中国との競争というレンズを通して、太平洋諸島の国々を見ているのであれば、強大な力を振るう者たちの利益だけが優先されることが予想される。(Radio New Zealand/OCT22, 2024)
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トランプ政権誕生に備える(太平洋諸島)
2024.10.28