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PACIFIC ISLANDS NEWS [ 太平洋諸島ニュース ]

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中国からの「天文学的」債務ー返済は可能か?(太平洋諸島)

過去20年間で、中国は太平洋地域で最大の融資国となった。ローウィー研究所の分析によれば、トンガ、バヌアツ、サモアは、GDPに占める中国への債務返済の割合が世界最大級となっている。トンガの年間対中債務返済額はGDPの約4%で、これは世界で3番目に高い水準である。サモアでは、中国への債務返済はGDPの2.6%で、これは世界で4番目に高い割合である。ローウィ研究所研究員Duke氏は、この太平洋諸国の中国に対する債務の割合を「天文学的な高さ」と呼んでいる。援助や開発の専門家によれば、自然災害や経済的ショックが頻発する太平洋島嶼国にとって、こうした債務は返済に大きな支障をきたすリスクがあるという。
つまり、返済期限が迫るにつれて、健康や気候変動への適応といった差し迫ったニーズへの支出を犠牲にするなど、各国政府は難しい選択を迫られることになる。2006年に内乱がトンガを襲った後、荒廃した首都ヌクアロファの再建が必要となった。トンガ政府が資金を探す中、最大の融資を申し出たのは中国だった。トンガは、返済期限である2030年までに1億400万米ドルの融資を返済するために、険しい坂を登らなければならない。
借金を背負った後、返済資金の捻出に苦慮していたトンガ政府は、中国の国有債権者であるEXIM銀行に対し、利息のみの支払い期間を延長するよう交渉した。しかし、中国は返済期限を延期しなかった。トンガの Tiueti財務大臣は、期限を守ると述べているが、2年前にローンの元本の返済を開始して以来、中国への年間返済額は1,700万米ドルを超えている。ローウィ研究所研究員Duke氏は、経済成長への大きな課題に直面しているこの地域で、この借金を背負うのは大変なことだと述べた。トンガの場合、政府は医療よりも債務返済に歳費を充てる事態となっている。一方、バヌアツはトンガに比べ、中国への借金返済で苦労をしていない。AidDataによれば、バヌアツは融資の返済を滞りなく行っており、中国が融資したインフラプロジェクトで債務危機に陥っているものはないという。そして、道路建設のための融資を受けているが、先のDuke氏によれば、融資によるインフラプロジェクトには、太平洋諸国にとって明確な経済的根拠が必要だという。太平洋島嶼国の債務問題は、中国にとっても難問であると専門家は指摘する。同地域で影響力を得たい一方で、借金を免除し、より多額の借金を抱える他の国々に前例を作ることは危険でもある。Duke氏によれば、太平洋島嶼国が中国に負っている借金は、世界第2位の経済大国である中国にとっては「四捨五入の誤差」だという。
その金額は非常に小さいため、中国政府にとって優先順位は非常に低く、太平洋のケースでアプローチを変える可能性は低いという。グリフィス・アジア研究所のChristoph Nedopil Wang所長は、太平洋島嶼国が債務危機に陥ることは中国の利益にもならないと述べた。また返済資金を稼ぐために、これらの国々が伐採などの環境破壊産業に目を向けざるを得なくなることも、世界的なリスクになりかねないと指摘する。そしてWang所長は、太平洋地域の債務状況の問題は、融資のリスクに対する中国の甘さが一因だと考えているという。2023年10月に中国とエジプトの間で交わされた債務スワップ協定は、太平洋地域の持続不可能な債務に対する解決策を示すものかもしれない。債務スワップでは、債権者は環境保護や再生可能エネルギーなど前向きな成果をもたらす投資と引き換えに、債務の一部を免除する。中国が債務を減らすためにさらに革新的な方法を使うかどうかが今問われているとWang所長は述べた。(Radio New Zealand/JUL29, 2024)

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/523464/pacific-island-nations-owe-astronomical-debts-to-china-can-they-repay