世界的な政治的混乱の中、太平洋は、世界の大国がそこにおける影響力を求めている地域である。地域の連携が従前どおりに重要だ。今年に入り、太平洋地域の地政学的位置づけがますます注目されているが、先週の太平洋諸島フォーラム・サミット（首脳会議）で、さらに注目が集まっている。太平洋諸島の地域安全保障は流動的であり、その変化は3つの支配的な要因によって加速されている。世界的な経済大国である中国と米国が、この地域に対する関心を新たにする中、その要因を考察することで、この地域の将来に関する洞察を得ることができる。第一の要因は、安全保障の定義づけを見直すことだ。太平洋諸島フォーラムのリーダーたちは2018年、「地域の安全保障に関するボー宣言」において、地域の安全保障に関する協力強化を約束した。この宣言は、人間の安全保障、環境と資源の安全保障、国際犯罪、サイバーセキュリティなどを網羅し、安全保障を広く定義している。しかし、この安全保障の定義に含まれる問題は多岐にわたるため、具体的な政策に反映させることは難しい。その根底にあるのは、「太平洋の人々にとって...唯一最大の脅威」である気候変動である。PIFの職員は、人権、健康、繁栄が既存の地域安全保障の取り組みにどのように適合するか、通常「安全保障」や「開発」に関連すると分類される分野を担当し取り組んできた。これまでに採択された戦略は、おおむね宣言に沿ったものであるが、地域の優先事項を拡大したものとなっている。ソロモン諸島の国家安全保障アプローチでは、宣言の実施を「戦略的行動」と位置づけ、国家海洋戦略や沿岸警備隊の能力開発などが盛り込まれている。バヌアツの安全保障戦略では、国家サイバーセキュリティ政策の実施と国家サイバーセキュリティセンターの設立を明記している。サモアの国家安全保障政策は、国境を越える犯罪や国境警備、ジェンダーによる暴力などの問題をバランスよく解決し、宣言と密接に連携しさせている。宣言の実効性を支援するため、PIF首脳は今月の会合で「青い太平洋のための2050年戦略」を承認した。同グループは、この地域の安全保障の取り決めを、より迅速かつ協力的なものにするよう提言することが期待された。
課題は、2050年戦略の導入が、宣言とその実施を導くことを意図した行動計画に影を落とし、弱体化させないようにすることだ。変化の第ニの要因は、特に中国と米国、オーストラリア、ニュージーランドおよびそのパートナーとの間の地政学的な争いが、ますます破壊的となっていることだ。太平洋諸国は、パートナー諸国がこの地域の戦略的競争に夢中になっていることに少なからず不満を感じているが、この戦略的競争から完全に逃れることはできない。ミクロネシアの加盟国が2021年にPIFから脱退すると脅したことは、ミクロネシアのほとんどの国が台湾を承認しているのに対し、太平洋の他の地域は台湾との連携が弱いことから、中国または台湾を承認する国の間の長年の断層が地域の連帯を破壊するかもしれないことを示唆した。2022年6月初旬のPIFの一見したところでの再統一は、太平洋の指導者たちが地域主義に価値を置き続けていることを示すものであった。太平洋が地域の連帯に価値を置いていることは、太平洋の指導者たちが、中国が提案した地域全体の経済・安全保障協定をその場で受け入れず、さらに検討し議論する時間を増やすよう呼びかけた集団的な反応によって示された。その後、PIFサミットの直前にキリバス共和国がPIFを脱退したが、マーシャル諸島大統領は、ミクロネシア圏が同国のフォーラムへの復帰を歓迎する意向を示している。変化の第三の要因は、太平洋諸国とパートナーが安全保障問題を議論し、対応策を策定することを可能にするメカニズムの必要性が高まっていることである。
「青い太平洋のパートナーズ」構想は、「強力で統一された太平洋諸島フォーラムを中心に」「太平洋地域主義をさらに高める」としているが、調整がこの地域の既存の取り決めとどのように適合するのかは不明である。また、以前の調整の努力を阻害していた要因が適切に対処されているのかどうかも明らかではない。このことは、太平洋諸国とそのパートナーとの間で安全保障問題に関する議論を促進し、対応策を策定することができる、太平洋諸国によって創設・管理される明確なメカニズムの必要性を示唆している。2019年以降、PIF内の小委員会は定期的に会合を開き、安全保障問題を議論し、それらに対応するために取られているイニシアチブを監視してきた。小委員会は主に情報共有の場として運営されてきたが、PIF関係者は、安全保障協力を調整し可能にする能力へと発展することを期待している。ザキオス駐米マーシャル大使が最近指摘したように、われわれには、安全保障問題を解決するための完全に効果的なプラットフォームがない。
地政学的な競争が激化し、そのために太平洋に対するパートナーの関心が続くと思われる中、PIFとフォーラムの年次サミットは、太平洋の指導者がさらなる選択肢を議論する機会を提供している。（Rradio New Zealand/JUL19, 2022)　
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/471230/an-expanded-empowered-pacific-islands-forum-could-lock-in-pacific-security