太平洋地域における水と衛生の課題への取り組みが、地域の政治家や国際的リーダーに後回しにされていることが懸念されている。水や気候変動などの問題について島嶼国に科学的・技術的な専門知識を提供している太平洋共同体(SPC)は、この地域における水衛生に関する取り組みが減少していることを報告した。太平洋地域の人口の約70%は、トイレ使用後の手洗いのための水道水へのアクセスを含む基本的な衛生ニーズが満たされていない。SPCのミンチン事務局長は、「太平洋地域の人口の45パーセントは、いまだに基本的な飲料水設備を利用できないでいる」と述べた。さらに同氏は、「水問題が、災害からの回復力や気候変動問題のように地域や国際的なリーダーから注目されていない」ことを懸念していると述べた。水問題は、健康面において多くの悪影響を及ぼす。水道の蛇口からきれいな水を得られない場所では、人々は徒歩で小川や井戸に行き水を汲まなければならず、その仕事をするのは子供や女性であることが多い。それが教育の妨げになり、影響を及ぼしている。パプアニューギニアは太平洋地域で最大の人口で、水の衛生状態やアクセス性の向上が切実に求められている。多くの取り組みが行われているが、200万人以上の人々がまだ清潔な飲料水を手に入れることができていない。ミンチン氏は、需要に追いついていないため、国による「献身的な努力と投資」が重要であると述べた。オセアニアの水へのアクセスは57%で、サハラ砂漠以南のアフリカを下回っている。世界平均は78%であり水へのアクセスの問題は複雑で、主に地方や離島のコミュニティで切実だ。SPCは、水へのアクセスを可能にするため、新しいソーラータンク技術の導入を開始した。自然災害が頻発する中、村のレジリエンス向上に貢献し、一部の島嶼コミュニティにとって画期的な出来事となりつつある。例えば、フィジーのキア島、ヤロ村では、2020年12月に発生したサイクロン「ヤサ」の影響で壊滅的な被害を受けた。雨水に頼っている給水システムが破壊されたため、フィジー政府はSPCに解決策を求めた。チームは2つのボーリング穴を掘削し、1日2000リットルの淡水をコミュニティーに送ることができるようにした。村人たちは、一人当たり5米ドルを支払って、自宅の水道の蛇口から水を出すことが可能となった。それ以来、家族の健康や教育にも良い影響を与えるようになり、子どもたちは水を汲みに行く必要がなくなり、時間通りに学校に行けるようになった。また、地域の皮膚のただれや下痢も減ったという。代替水源を見つけることは、人々に水を与えることをはるかに超えるインパクトがある。ミンチン氏によると、遠隔地まで掘削装置を運ぶのはコストがかかり、困難なことだったという。ヤロ村の水事情は改善されたが、キア島の他の2つの村はまだきれいな飲み水を手に入れることができていないという。(Radio New Zealand/ MAY 03,2022))
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/466184/water-and-sanitation-in-the-pacific-continue-to-be-dire
太平洋地域
【経済・社会動向】
水と衛生に関する悲惨な状態が継続(太平洋諸島)
2022.05.13