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PACIFIC ISLANDS NEWS [ 太平洋諸島ニュース ]

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海底資源開発のジレンマ(太平洋諸島)

太平洋での海底資源の採掘は、漁業に影響を与える可能性があり、そこから波及する社会的公平性の問題に対処する必要がある。現在、海底から数百メートルの深さにある資源が、近い将来、私たちの電子機器や建設現場で使用されるかもしれない。銅、コバルト、マンガンなどの鉱物を求め深海を採掘したいという願望は今に始まったことでないが、現在は企業が商業規模の採掘を推進している。深海採掘の規制機関である国際海底管理局(ISA)は、ナウルが昨年、いわゆる「2年トリガー」を引き、自国海域における2年以内の海底資源採掘開始を許可したことで、ISAはその期限までに採掘計画を評価するために必要な規制を整備しなければならなくなった。しかし、採掘許可までには数多くの問題に対処する必要がある。
海底の採掘は、騒音、重金属汚染、大量の堆積物の噴出を引き起こす可能性が高く、海底の生態系だけでなく、魚類資源を含む中層の生態系にも重大なリスクをもたらす可能性がある。ほとんどの海底鉱物探査が行われている太平洋島嶼国やその他の開発途上国の多くは、政府歳入、栄養、生活の糧を漁業に依存している。
特に、魚に依存している低所得国の多くにとって、食料安全保障は喫緊の課題であり、マグロは地域住民の栄養ニーズに欠かせないものだ。太平洋地域は世界最大のマグロ漁場であり、マグロ資源の減少は、海洋に依存するコミュニティの健康、経済、生活に悪影響を及ぼす。マグロに依存する太平洋の小島嶼国では、マグロがGDPの平均37%を占め、中には84%を占める国もある。海底資源の採掘は、これらの経済を危険にさらす可能性がある。マグロ資源はすでに気候変動の脅威にさらされており、科学的モデルではマグロに依存する太平洋島嶼国10カ国の漁獲量が大幅に減少すると予測されている。魚種資源の減少は、不安定な食料供給、漁業許可証による収入の減少、漁業や水産加工業における雇用の喪失、コミュニティの緊張につながる可能性がある。国連海洋法条約(UNCLOS)は、国際海底の鉱物を人類の共通遺産として法的に分類しており、すべての人の利益のために管理されるべきだとしている。しかし、この定義では、誰が負担を負い、誰が利益を得るのかという公平性に疑問が残る。また、海底資源の採掘による経済的利益の一部はUNCLOSに基づいて国際社会と共有しなければならないわけだが、どの程度、どのような目的で共有するかはいまだ定義されていない。
ISAは、国際海底でのすべての海底採鉱を規制しており、採鉱契約を得るためには国家の公的支援が必要だ。国は、支援の見返りに、採掘業者からロイヤルティや経済的利益を受け取ることができるが、社会的・経済的リスクはあっても、地域社会への見返りはない。なぜなら、深海の採掘は、そのオペレーションの多くをハイテクとロボットに頼っており、代替雇用を創出しないからだ。新しい産業であるため、採掘に使用される技術は大規模なものではまだ証明されておらず、環境面での懸念も大きい。ナウル、トンガ、キリバスは現在、カナダのThe Metals Company(旧DeepGreen)と採掘契約を結んでいる。この会社は、パプアニューギニア沖で海底鉱物を採掘しようとしていたが破綻したNautilus Minerals社と関係がある。このパプアニューギニアでの試みは失敗に終わり、パプアニューギニアは1億2千万ドルの負債を抱えることになった。こうした採掘協定は、関係者に利益をもたらす一方で、開発途上国の集団的利益を損なう可能性がある。この関係は、深刻な環境被害が発生した場合、法的・経済的なリスクをも生み出す。例えば、支援国は、国際法に基づいて損害賠償責任を負う可能性がある。大手製造業ブランドが環境問題を理由に海底から採取した鉱物の使用を拒否するなど、海底採掘は社会的ライセンスの取得には程遠い状況だ。2023年までの時間が経過するにつれ、産業界や政府に対して、海から採取した鉱物を使用しないようにという圧力が強まっていくかもしれない。国とISAは、社会・環境保護条項が、採掘活動そのものだけでなく、採掘と他の活動やサプライチェーンとの相互関係にも適用されるようにする必要がある。(Radio New Zealand/FEB07, 2022) https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/461094/seabed-mining-equity-dilemmas-in-the-pacific