太平洋諸島フォーラム事務局長はマーシャル諸島に存在する核のドームから放射性物質が漏れている可能性が否めないとして査察を要求した。そのコンクリート状のドームは、エニウェトク環礁の端の小さな島にあり、1950年代60年代の核実験の際の廃棄物を格納し厚さ45センチのコンクリートでおおわれているが、核実験反対派からは何年も前から危険視されてきた。6月18日にPIF事務局長のメグ・テイラー氏はミクロネシア連邦大統領のディビット・パニュエロ氏との会談において、「欠落しているのは中立の立場での証明です。現状の査察をして漏れがあるのかどうかを調べ、不安を拭い去るか、または、しかるべき処置を早急にしなくてはならない。」と述べた。ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領も、この地域で団結して事に当たる権利があると主張し、IAEAの査察の前にまずアメリカとの話し合いをしなくてはならないとした。5月に国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏がこの太平洋地域を訪問した際にも、このエネウィトク環礁のドームに関心を寄せ、太平洋地域は核実験の後遺症に対処するための支援が必要だと述べていた。マーシャル諸島のハイネ大統領も事態を憂慮しているという。(Radio New Zealand/JUN20, 2019)
補足:
太平洋上のルニット島には、陵墓のようにも見えるドーム型の建造物が存在する。その中に納められているのは8万5000立方メートルものプルトニウム239だ。エニウェトク環礁はマーシャル諸島共和国に属しているが、第二次世界大戦終結後の1947年から1982年まではアメリカ合衆国の信託統治領だった。核実験の中心地だったマーシャル諸島のエニウェトク環礁にあった40の島々のうち、4つの島は実験により消え去った。現在、エニウェトク環礁ルニット島には、巨大なドーム型の建造物が残されている。ドームの中には、核弾頭として使用された、比放射能の高さなどから、「地球上で最も有毒な物質の1つ」とも形容されるプルトニウム239が約8万5000平方メートルも堆積してる。そのドームの上部は厚さ45センチメートルのコンクリートだが、その土壌は透水性で、海面の上昇とともに中に海水が出入りしている。
2013年、アメリカ合衆国エネルギー省によって、このドームから放射線物質が漏出していることが報告され、エニウェトク環礁からのコプラや魚などの輸出は禁止さた。地元の人々はドームを「墓(Tomb)」と呼んでいる。