米国がベネズエラへの軍事行動を強化し、Caracasでの攻撃やMaduro大統領の拘束に踏み切った背景には、政治介入だけでなく、石油や重要鉱物の供給網を巡る争いがある。米政府にとって、エネルギーと戦略資源の掌握は戦力投射と不可分となっており、その論理は太平洋の海底資源にも及び始めている。太平洋では、Hawaiiとメキシコの間に広がるClarion-Clipperton Zone(CCZ)が注目されている。国際海底機構(International Seabed Authority:ISA)が管理する広大な公海域には、深度4〜6kmの海底に、ニッケル、コバルト、銅、マンガンを豊富に含む団塊(ノジュール)が分布する。これらは電気自動車用電池、電子機器、風力発電、軍需産業に不可欠な金属で、採掘はロボット式装置で団塊を吸い上げ、船上で回収・陸上処理する方法が想定されている。さらに、熱水噴出孔の硫化物鉱床や海山のコバルトに富む地殻も対象となっている。海底鉱物の地政学的重要性が高まる理由は、2つある。1点目は、エネルギー転換によって金属需要が今後20年で少なくとも倍増すると見込まれている。2点目は、供給網が限られた国に集中し、民主国家がリスクを懸念する状況である。海底資源は、重要鉱物の供給源多角化という「保険」として見られている一方で、CCZでは漁業との衝突が懸念されている。気候変動の影響で、メバチマグロ、カツオ、キハダマグロといった主要マグロ類がCCZに移動し、CCZ内の資源量が10〜30%増加すると予測されているが、同時にISAの認可を受けた17の採鉱事業者が同海域で活動予定であり、漁業と採鉱が同一海域を共有する状況が生まれる。採鉱に伴う堆積物プルーム(sediment plume)は数十〜数百kmに拡散し、プランクトンや中層生態系に深刻な影響を与える可能性がある。研究では、動物プランクトンや小型遊泳生物の半数以上が影響を受け、マグロ資源にも波及すると警告されている。過去の実験跡では、数十年経っても生物多様性が回復しておらず、2025年にはクック諸島が中国と米国の双方と海底資源を巡る戦略協定を締結し、大国間競争が太平洋海底に集約しつつあることが示された。アメリカ領サモア周辺でも米国が調査を開始し、地域社会から懸念の声が上がっている。ISAは探査のみを承認しており、太平洋諸国は科学的知見が整うまでのモラトリアムを求めている。同時に、公海条約(High Seas Treaty)の批准が進み、環境影響評価や海洋保護区設定の枠組みが整いつつあり、科学・文化・同意に基づく太平洋主導のガバナンスこそが、深海を守りつつ人類の選択を誤らせない鍵だと結論づけている。(Radio New Zealand/JAN22, 2025)
Deep sea mining is the next geopolitical frontline – and the Pacific is in the crosshairs | RNZ News
太平洋地域
【鉱物資源開発動向】
深海採鉱は次の地政学的最前線(太平洋諸島)
2026.01.26