パプアニューギニア(以下、PNG)の議会は治安を重視した2026年国家予算を可決したが、与野党双方から透明性と説明責任を強く求める声が上がっている。議会のYopyyopi計画・予算委員長は、予算は「厳密で現実的な前提」を要求する規模であり、過度に楽観的な数値は国と国民の社会契約を損なうと警告した。委員会の審査においても、経済現実と予算数値の乖離を浮き彫りにしている。同委員長は、記載された歳入が過度に楽観的である点、恒常的なキャッシュフロー危機、積み残し債務が増加している点を指摘した。その結果として、保健センターの閉鎖、州政府への機能的交付金の遅延、学校や病院、地方道の劣化など基礎サービスの劣化が広がっていると述べている。East Sepik州のBird知事は、「国民はこの議論を見守っており、記録的な予算がいつ現場の解決に結びつくのかを問うている」とし、薬品のない診療所、教材のない教師、電力の断続といった実情を列挙して批判した。Bird知事は2024年と2025年を「机上の空論予算」と表現しており、予算配分が実際の資金移転と結びついていないと糾弾した。O'Neill元首相もコメントを寄せていて、赤字政策自体は生産的投資に向かう限り問題ではないが、現在の傾向は借入が経済成長に寄与せず、システムの維持に使われている点で異なると警告した。特にPNG中央銀行に対する一時的前払制度の拡大について、O'Neill元首相は20億キナ(約733億円)に膨らんでいる点を問題視した。さらに、政府案には税務局の運営に政治的な監視委員会を導入する改正が含まれており、これに対してはYopyyopi計画・予算委員長、Bird知事、O'Neill元首相が揃って反対を表明していて、彼らはIRCの独立性が国内で最も強力な歳入源の安定性を支えているとし、政治的干渉は税収に悪影響を及ぼすと懸念を示している。そして、依然として最大の問題が「キャッシュフローの危機」であると指摘する。予算上の割り当て額があっても実際の資金移転が遅延し、プロジェクトは資金不足のまま放置される。また、報告では2023年の150億キナ、2024年の180億キナという未決済小切手の規模を挙げ、将来のキャッシュフローをすでに先取りしている現状を懸念している。地方政府は、地方自治体サービス基盤整備プログラムや地域サービス向上プログラムといった開発資金を日々の運営資金に充てざるを得ない状況に陥っていて、これが都市部への人口移動やスラム化につながっていると報告されている。議会内外では信頼の危機が深まっており、国民は「豪華さ」ではなく基本的な安全、電力、水、食料、尊厳を求めているとの声が強まっている。Yopyyopi計画・予算委員長は、議会に対して現実的な財政管理と規律の回復を求め、「現実に根差した予算編成」を行わなければ、サービス提供システムのさらなる崩壊を招くと警告した。(Radio New Zealand/DEC3, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/580736/papua-new-guinea-parliament-passes-security-focused-2026-budget
パプアニューギニア
【経済・社会動向】
議会が治安重視の2026年予算を可決(パプアニューギニア)
2025.12.09