ハワイ大学マノア校(University of Hawai‘i at Mānoa)の研究によると、深海採掘による堆積物(プルーム)が海洋の「薄明層(twilight zone)」の生態系を乱し、マグロなど大型魚類にまで影響が及ぶ可能性があると示された。研究成果は、科学誌『Nature Communications』に発表された。この層(深度200~1,500m)には、動物プランクトンなど海の基礎生物が生息しており、主要著者のDowd博士は「採掘が本格化すれば、これら生物の主な食糧源に深刻な影響が出る」と警鐘を鳴らしている。堆積物のタンパク質濃度は、背景の海水より10~100倍も低かったという。本研究は2022年に北太平洋のクラリオン・クリッパートン海域(Clarion-Clipperton Zone)で行われ、採掘廃棄物が中層生態系に及ぼす影響を調査であった。Dowd博士は、「従来の研究は海底中心で、中層への影響は見過ごされてきた」と述べた。廃棄物は採掘時に吸い上げられる堆積物を再放出する過程で発生する。まだ商業採掘は始まっていないが、一部の企業は「薄明層」での放出を提案している。深海採掘を主導する企業メタルズ・カンパニー(The Metals Company:TMC)のClarke環境マネージャーは、「当社の放出は深度2,000mであり、プランクトン層より下、堆積物は急速に希釈される」と反論した。これに対して、研究者らは「鉱物採取のために、海洋生態系を危険に晒す覚悟が社会にあるのか」という問いかけている。(Radio New Zealand/NOV12, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/578593/deep-sea-mining-plumes-threaten-ocean-food-web-endanger-tuna-fisheries-study
太平洋地域
【鉱物資源開発動向】
深海採掘の堆積物が海洋食物網を脅かし、マグロ漁業にも影響の恐れ(太平洋諸島)
2025.11.18