オーストラリア(以下、豪州)のシンクタンクLowy研究所がまとめた報告によると、ニュージーランド(以下、NZ)や西側諸国が開発援助を削減した結果、太平洋地域では年間約2億米ドルの資金不足が発生する見通しとなっている。報告書には、NZが今後2年間で海外援助を約35%削減する計画であるとの指摘がある。これは地域全体の開発資金の10%を担ってきたNZの役割が大きく後退を意味している。豪州がその穴を埋め、現在太平洋地域の援助の43%を占めている。主任研究員であるDuke氏は、「パンデミック後の危機支援ローンは期限付きで、豪州や日本が行った大規模予算支援は終了した。また、援助がインフラ事業に集中し、教育や保健といった基礎分野が犠牲になっている」と言及している。報告書には「主要な西側ドナーによる急激な援助削減が、世界の開発体制を混乱させている」とあり、今後は小規模な無償資金協力が主流になると分析している。これにより、財政難と債務負担が増す多くの太平洋諸国に深刻な影響が及ぶ恐れがある。Duke氏は、「2028年までにオーストラリアが太平洋地域の援助の半分以上を占める可能性がある」と述べた。これにより、NZ・米国・英国などの「同盟国」が後退する中で、豪州の影響力が一層強まる見通しとなっている。開発専門家のWood氏は、「NZは援助を中国の影響力に対抗する手段として扱っており、長期的なビジョンより取引的になっている」と批判している。また、報告書には米国の援助縮小は太平洋諸国への影響が比較的限定的で、多くが自由連合協定(Compact of Free Association Agreements)を通じて保護されていると記されている。一方で、パラオでは2022年から2023年にかけて援助が61%減少、フィジーは57%減、パプアニューギニア(以下、PNG)は実額で4億3100万ドルの減少となっており、いずれも近年で最低水準に落ち込んでいる。また、PNGにおいては2008年以降の開発資金の44%が融資であり、無償援助よりも債務型資金が急増しているとの記載もある。(Radio New Zealand/OCT30, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/577193/pacific-faces-major-aid-shortfall-as-nz-and-western-donors-scale-back-lowy-institute-report
太平洋地域
【経済・社会動向】
太平洋地域で支援不足が深刻化 NZと西側諸国が援助縮小―Lowy研究所報告(太平洋諸島)
2025.11.06