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総選挙を目前に中国との協定で農業近代化を狙う(トンガ)

トンガ政府は総選挙を数週間後に控える中、中国との新たな貿易・サービス協力枠組みを承認した。自給的農業が中心のトンガにおいて、商業規模の輸出型生産へ転換する狙いである。首相代行のFusimalohi氏は、内閣が農業の近代化を目的としたプログラムに正式に承認を与えたと発表し、主要輸出品となるサンダルウッド(ahi)やナマコ(mokohunu)など、中国市場向け商品の生産拡大を目指すという。Fusimalohi氏は、「これで生産性が飛躍的に高まる」と述べ、農家の約80%が依然として自給的農業に従事している現状を問題視した。今回の協力枠組みは、中国による太平洋地域の農業支援をさらに拡大させるものでもある。中国はすでにトンガ、フィジー、パプアニューギニアで農業・水産分野の技術支援を行ってきており、豚や鶏の飼育、温室果物の栽培、実証農場の運営などの支援が含まれている。
トンガの農民団体や市民団体は、「持続可能な食料システムを築くには、農民のリーダーシップ育成が不可欠」と指摘し、地域主体の取り組みを求めている。米国議会調査によれば、トンガの中国への年間返済額はGDPの約4%に達し、公的サービスや気候対策の妨げになりかねないという。今回の協定が従来と異なるのは、単なる技術支援ではなく、貿易サービス連携と機械化農業を含んでいる点である。これにより中国のサプライチェーンへの参加や商業規模の農業が可能となり、数千人の小規模農家が輸出対応の生産者へ転換する可能性がある。ただし選挙を目前にしたこの合意には、政治的な意図も透けてみえる。政府は雇用創出と経済成長への即効性をアピールしようとしている。しかし、専門家は成功の鍵は署名ではなく、インフラ整備・人材育成・輸出基準への対応・市場アクセスの確保にあると警告している。こうした要素が欠ければ、利益は外国側に偏る恐れがある。トンガとの協定は、中国がインフラ分野を超えて太平洋諸国との連携を広げる動きの一環でもある。2025年5月、中国のWang外相は農業・貿易・漁業・観光での協力強化を表明し、「共通の未来を築く共同体」として太平洋地域を位置づけ、中国は農業支援プロジェクトを多数展開し、太平洋島嶼国との貿易を戦略的優先事項と捉えている。その背景には、資源確保と地政学的影響力拡大である。トンガにとって、この協定は農業機械化や輸出収益の増加をもたらす可能性を秘めるが、その実現には課題が山積みとなっている。小規模農家が商業農家に成長できるのか、検疫や物流など輸出基準をどう整えるのか、そして外資導入と主権のバランスをどう取るのかが、今後の焦点となる。総選挙を前にトンガの農業は転換期を迎えており、中国の太平洋進出が進む中、今回の合意は、トンガだけでなく太平洋諸島の将来をも左右する可能性がある。(Radio New Zealand/OCT30, 2025)

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/577307/tonga-bets-on-china-deal-to-modernise-farming-ahead-of-general-election