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PACIFIC ISLANDS NEWS [ 太平洋諸島ニュース ]

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変化する環境 – 気候変動に脅かされるマグロ(太平洋諸島)

太平洋地域の海洋生態系と経済安定の要となっているマグロが、かつてない試練に直面している。海水温の上昇、海水の酸性化、海流の変化を理由に、マグロの魚群は新たな領域に追いやられ、太平洋島嶼国とその漁業が危機に晒されている。パラオの人々にとって、海は単なる資源ではなく、アイデンティティの根源的な要素となっている。パラオの漁師たちは、海を大切にすることが自分たちの責任であると考えている。しかし、近年、漁師たちが慣れ親しんだ海が予測不可能な状況となりつつある。例えば、大雨が浅瀬の魚を浮遊させ、酸素不足で死に至らしめるといった事態が発生している。かつては稀であったこうした現象だが、現在では頻繁に発生し、その影響は深海にまで及び、海岸線沿いではサメやエイ、大型魚の死骸が報告されている。漁師たちは海が「温かすぎる」と訴え、一般的に水温に従う習性のあるマグロは、これまでの周期的な漁場ではみられなくなってきている。また、気候変動は漁業以外にも様々な影響を及ぼしている。季節外れに発生する台風は、果物類に広範囲な被害をもたらし、海洋保護区のサンゴに影響を及ぼすバクテリアの大発生につながっている。マグロの移動パターンの変化は、パラオに限ったことではなく、太平洋地域全体にとって重大な懸念点である。マグロ漁業は当地域における主要な経済の牽引役であり、大規模商業漁業会社へのライセンス販売を通じて、当地域に年間5億米ドルをもたらしていると推定されている。西・中央太平洋地域だけで世界のマグロ漁獲量の50%以上、年間約60億米ドルを供給しており、その大部分は太平洋諸島の排他的経済水域(EEZ)からもたらされている。そして、多くの太平洋島嶼国にとって、米国、日本、中国といった国々への産業漁業ライセンスの販売は、重要な政府収入源となっている。マグロの回遊性を考えると、こうした一貫した保全と管理には地域の協力が不可欠である。ナウル協定の締約国が2010年から2011年にかけて実施した漁船日数制度(VDS)は、重要な管理措置といえる。VDSのもとでは、1日あたり8,000米ドルという基準価格で、加盟国に漁獲日数が割り当てられている。しかし、今後25年の予測では、マグロの大部分は現在の太平洋地域の排他的経済水域外に移動する可能性があるとされ、事態の深刻さを認識し、地域的な取組みが強化されている。2025年2月、緑の気候基金は、太平洋諸国14ヶ国に対して、マグロに対する気候変動のリスク管理を支援するため、1億米ドル以上の助成金を拠出すると発表している。深刻化する気候変動の影響に立ち向かう太平洋のマグロとの戦いは、当地域の回復力と、世界的な責任を求め続ける姿勢の証しとなっている。太平洋の島嶼国の経済と生活だけでなく、世界的に重要な食糧源と世界最大の海洋の健全性にとっても、大いなる挑戦である。(Radio New Zealand/JUL08, 2025)

https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/566311/a-changing-environment-tuna-threatened-by-climate-change