2024年末に起きたバヌアツの壊滅的な地震、トンガとニューカレドニアにおける劇的な政治的展開は、太平洋地域における今年1年の流れを決定づけた。トランプ政権の発足は、中国との地政学的な覇権争い、それに伴う地域の軍事化、気候変動に対する米国の対応など、さらなる不確実性を加えることになる。また、太平洋地域最大の国(パプアニューギニア)が独立50周年を迎えるにあたり、同地域における多くの領土の非植民地化も引き続き注目されている。12月17日にポートビラを襲ったマグニチュード7.3の地震は、バヌアツに大きな打撃を与えた。同国は対応から復旧へと移行しつつあり、被害の全容が明らかになりつつある。経済的な打撃は大きく、一部の企業は新年以降まで営業開始しないと発表している。この大惨事の最中、バヌアツでは政治的な混乱も発生しており、災害が襲う前の11月に実施が決定されていた総選挙が1月16日に延期された。クリスマス・イブには、トンガで新しい首相が選出された。Aisake Valu Eke氏は経験豊富な政治家であり、以前は財務大臣を務めていた。同氏は、政府とトンガ王室との間の長引く緊張関係の末に突然辞任したSiaosi Sovaleni氏の後任となった。ニューカレドニアでは、同じくクリスマスイブに、カレドニア・アンサンブル党が政権を退陣したことで、政府が崩壊した。2024年の暴動と市民の混乱により、経済は停滞し、物議を醸していた選挙制度改革は阻止されたが、今回の政治的混乱により、フランスからの2億3700万ドルの復興資金パッケージのうち、約7700万ドル(7500万ユーロ)が損なわれる可能性が危惧されている。2025年、太平洋地域で最大のイベントは、オーストラリアからのパプアニューギニア独立50周年記念式典だろう。この式典では、同国の将来について、何らかの考察と行動が期待される。また、9月16日に発表が予定されている、不備が散見された2024年国勢調査の結果も注目されている。2025年にはトンガとバヌアツでの投票に加え、ミクロネシア連邦、ナウル、ニューカレドニア及びブーゲンビル自治政府でも総選挙が実施される予定である。また、太平洋地域への最大の支援国であるオーストラリアでも連邦議会選挙が実施され、政権交代がほぼ確実視されているが、この政権交代は同地域に影響を及ぼすことになるだろう。太平洋諸島地域では、地政学的な暗雲が立ち込めており、2025年にそれが変わることは考えにくい。最大の未知数は、トランプ政権が今後、政策や資金調達設定をどの程度変更するのかである。米国が太平洋諸島地域への関与を再開(再強化)したのは、トランプ氏が現職当時にさかのぼる。しかし、トランプ大統領のこれまでの気候変動に関する言動を考えると、同地域にとって重要な安全保障上の課題に関して、米国がどれほど信頼できる同盟国であり続けることができるのか、懸念の声も聞かれる。トランプ氏が前回ホワイトハウス入りした際には、米国をパリ協定から離脱させたが、今回も同様の対応を取るだろうと広く予想されている。太平洋地域の指導者や擁護者たちは、気候変動に関する構造的な課題に直面している。紛争や地政学的な競争が増加するにつれ、気候危機に対する世界的な関心は弱まっている。パートナーの関与がますます安全保障化するにつれ、昨年のCOP29に対する失望感は続きそうである。2025年の世界的主要イベントは、6月にフランスのニースで開催される「海洋サミット」である。これは、太平洋諸国が気候外交を新たなレベルに引き上げ、問題の核心を突くための重要な会合となる。地政学的な状況を最大限に活用することで、太平洋諸国は主要なプレーヤーたちにさらなる高い目標を追求するよう促すことができるだろう。G20諸国のうちのいくつかは、太平洋地域における影響力を拡大し、深めようとしている。その中には、太平洋地域に戦略的利益を有する、世界最大の排出国5カ国(中国、米国、インド、ロシア、日本)も含まれている。太平洋地域との関わりがますます取引的な性質を帯びてきていることを踏まえれば、2025年には、太平洋地域の政府が自国民の人間の安全保障に取り組む方法で、地政学的な利点を活用する機会が訪れるはずである。(Radio New Zealand/JAN6, 2025)
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/538280/pacific-2025-what-is-happening