第2章 要約 1. 太平洋島嶼国の実情 GHG削減に貢献する事業を実施している現地企業の数は未だ限定的ではあるものの、フィジーでは同国が進める電気自動車の導入促進に合わせて、電気自動車輸送エコシステムの構築に取り組み、充電ステーションの設置と電気自動車の輸入に投資をしている企業も見られる。 2. 国外関係者の対応状況 太平洋島嶼国では、オーストラリア、ニュージーランド、アジア開発銀行(Asian Development Bank: ADB)、世界銀行(World Bank: WB)、さらには緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)などが再エネ導入に係るプロジェクトや気候変動に対する各分野の強靭性を向上させるプロジェクトなどを実施している。たとえば、オーストラリアは、PNG・オーストラリア間のパートナーシップによって設立されたファンドを通じて、民間企業や組織によるオフグリッド地域における3 太平洋島嶼国各国は「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)」やエネルギーロードマップもしくはそれに準ずるものを定めている。パプアニューギニア独立国(PNG)やフィジー共和国などの人口が多い国を除き、太平洋島嶼国の温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)排出量は他国/地域と比べても少ないがGHG削減に取り組んでいる。たとえば、GHG削減のために、太陽光発電や水力発電を主とした再生可能エネルギー(再エネ)の導入促進をはじめ、運輸セクターにおける電気自動車の導入、輸送セクターにおけるエネルギー効率化など、さまざまな施策が各国の個別事情に合わせて掲げられている。一方、太平洋島嶼国は気候変動により多大な影響を受けることが想定されているため、「緩和」に当たるGHG削減だけでなく、気候変動に対応するための「適応」にも意識が向けられている。GHG削減に資する製品・技術を普及するための導入促進策が充実している国もあれば、導入促進策が不足している国もある。 クリーンエネルギービジネスやプロジェクトに対して資金を提供するプログラムである「Pawarim Komunit PNGオフグリッド電化プログラム」を実施している。 外国企業も特にエネルギー、建設、農業などさまざまなセクターにおいてGHG削減や適応に係る事業を展開している。たとえば、PNGでは水素の製造を年間に2.3百万トン行うための再エネプロジェクト(水力発電および地熱発電)に取り組んでいる企業がある。 3. 日本側の取り組み 日本は太平洋島嶼国で再エネを含むエネルギー、防災などを含む気候変動、さらには生物多様性や環境人材育成など多種多様なプロジェクトを実施している。たとえば、フィジーを拠点として、キリバス、ツバル、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島を対象に、島嶼型ハイブリッド発電システム技術 の普及を支援し、太平洋島嶼国の化石燃料使用量およびGHGの削減を目指す「太平洋地域ハイブリッド発電システム導入プロジェクト」、PNGにおけるGHG排出の最大要因である森林劣化・減少の改善に直接的に貢献する「森林伐採モニタリングシステム改善を通じた商業伐採による森林劣化に由来する排出削減プログラム」 などがある。JICA民間連携事業を通じても多くの日本企業が緩和や適応に資するビジネスを実施しようと試みている。一方、実際に太平洋島嶼国に進出し、緩和や適応に資するビジネスを展開している日本企業の数は今もなお限定的である。
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