第1章 調査の概要 1.1. 調査の背景 6 脱炭素とは炭素(主に二酸化炭素)を排出しないことを意味している。また、脱炭素とほぼ同義で使われる7 脱炭素ビジネスとは、脱炭素化社会の実現に資するビジネスと本提案書内では定義する。脱炭素ビジネスの領域として、エネルギー領域(再エネ、省エネなど)だけでなく、ライフスタイル領域(シェアリング、ゼロエネルギーハウス)、地域の脱炭素、産業領域など幅広い領域を視野に入れて調査を行う(事業構想大学 「身近なチャンスを見逃さない 脱炭素ビジネスのキーワード」https://www.projectdesign.jp/202105/decarbonized-society/009298.php) 1 1.2. 調査の目的 1.4. 調査対象国分類 気候変動に対する脆弱性が高い太平洋島嶼地域には、脱炭素6目標を国家として積極的に掲げるなど、環境意識の高い国が多い。脱炭素目標を達成するために、オーストラリアを始めとした周辺国の政府・企業・国際機関等による具体的な支援が活発化する見込みであり、日本による同地域への支援や脱炭素分野での交流が期待されている。一方、島嶼国の脱炭素化に関するエネルギー事情についての情報は少なく、日本企業が島嶼国にて同分野のビジネスを展開する際のアイディアや判断材料が乏しいのが現状である。「島嶼国エネルギー等事情調査」(以下、本調査)は、この期待に民間企業の投資を通して応えるべく、同島嶼国への進出を検討する日本企業に参考となる情報を収集するものである。 本調査は、脱炭素を掲げる太平洋島嶼国で日本企業が脱炭素ビジネス7を実施する可能性を示すために、島嶼国のエネルギー消費、再生可能エネルギー(再エネ)導入の実情などのエネルギー事情に関する情報収集・整理を中心に行う。また、太平洋島嶼地域の特徴として温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)の排出量が他の国・地域と比較して少ない一方、気候変動によって受ける影響が大きいことから、GHG排出量を削減する「緩和策」と共に気候変動に対する強靭性を持つための「適応策」の導入も期待されている。よって、脱炭素を含めた緩和のためのビジネス(緩和ビジネス)だけでなく、気候変動の影響を緩和させるためのビジネス(適応ビジネス)の観点からも情報を整理した。そのうえで、海外進出を検討する日本企業に俯瞰的な情報を提供することを目的とする。 1.3. 調査方法 本調査は公開情報(ウェブ、報告書など)を基にした机上調査と最重点国・重点国(表1-1)への質問票調査にて実施した。なお、特に出所の表記がない場合は受託者が作成したものである。 太平洋島嶼国はメラネシア地域、ポリネシア地域、ミクロネシア地域に分けられるが、本調査ではこれら地域14か国を網羅的に調査するものの、有用な情報を効率よく収集するため、GHG排出量、一次エネルギー(Total Primary Energy Supply: TPES)供給量、GDP規模などの観点から、表 1-1のとおり各島嶼国を最重点国・重点国・その他に区分した。 「カーボンニュートラル」とは「温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)の排出量と吸収量を均衡させること」であり、これは二酸化炭素をはじめとするGHG の「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。本提案書内でも、脱炭素とカーボンニュートラルをほぼ同義として捉える。
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