パプアニューギニアガイドブック
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90 現在ではトーライ族がガゼル半島を中心に広く居住し、州の人口の2/3を占めている。トーライ族の伝統的な貨幣として知られるのがシェルマネーのタブ Tabuである。タブは直径5mm程の小さな海洋性のカタツムリの貝で、これに穴をあけ、籐のヒゴに通して束にし、それらを繋いでリング状にしたり、巨大なものはタイヤのようにして保管される。タブは大人が両手を広げた長さの単位「ポコノ」Pokonoで価値が測られ、古くからトーライ族の貨幣として広く流通し、また財産として重宝されてきた。現金としてだけでは無く、結納や葬儀の際の贈り物、いさかいの調停手段として社会的な価値をも持ち、キナとトヤと言う貨幣が法定通貨となった今でも推定で800万キナ(約3億円)相当のタブが流通していると言われており、青空市場での買い物の他、学費、法廷での支払いなどに認められる場合もあり、法定通貨と交換する「銀行」も存在している。 トーライ族のもう一つのユニークな伝統は男性による「秘密結社」で、トゥブアンと言う女性の精霊と、息子とされるドゥクドゥクを崇め、独自の儀式や掟を持っている。多くは門外不出だが、毎年開催されるマスクフェスティバルでは一般人でも、これらの精霊が登場する儀式「キナバイ」を見ることが出来る。 トーライ族は西洋人との接触が早く、キリスト教や教育も広く普及していながら、タブの流通や秘密結社を継続させ、西洋文明と伝統文化を上手く調和させている点も東ニューブリテン州の大きな特徴と言えるだろう。 トーライ族の言語であるクアヌア語はココポ、ラバウルを中心として広く話されている。ピジン語はそれに次ぐ。ピジン語にはその形成過程から多くのクアヌア語が含まれており、ピジン語で「木」を意味する「ディワイ」、「卵」を意味する「キアウ」、「小さい」を意味する「リキリキ」など、多くの言葉がクアヌア語を語源とする。土産物として売られているリング状のシェルマネー儀式での精霊ドゥクドゥクバイニング族のファイヤーダンス

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