歴 史37 ミルンベイ州はニューギニア島の最東端、北はソロモン海、南は珊瑚海に面した州で、400以上の島を有する海洋州と言える。 気候は熱帯雨林気候で最高気温は11~2月には30℃を超えるが、6~8月は30℃未満の日も多く南東の貿易風の影響もあり、体感的には涼しく感じることも多い。年間降雨量は3000mmで年間を通じて多雨だが、11~3月にかけては月間降雨量が200mm以下で晴れの日が多く、一方6~8月は400mmを超える月も多く、パプアニューギニアの一般的な雨季・乾季とは逆になっている。 太古から島々の間で行われていた物々交換である「クラ・リング交易 Kula Ring」は南太平洋で最も豊かな文化遺産の一つと言われる。この交易はバギと呼ばれる特別な赤い貝のネックレスが時計回りに、ムワリと呼ばれる白い貝の腕輪が反時計回りに、数十キロから100キロも離れた島々をリレー式に廻り、地域の平和と互助が維持されていた。 1891年にロンドン・ミッショナリーがクワト島(Kwato Island)に設立したクワト教会は、教育機関として原住民へのボート製造技術指導、農業研修、管理者研修などを国内で初めて行い、一時期はここで専門教育を受けた人たちがパプアニューギニア発展の一翼を担っていた。因みに地元企業でボート船体製造会社のサマライ・プラスチックス(Samarai Plastics)は、ここで培われた技術が現在まで受け継がれた会社で、長年にわたりエラモータース(Ela Motors PNG; 豊田通商が展開するトヨタ自動車とヤマハボートのディーラー)へのボート納入を行っている。 州南部のサマライ島(Samalai Island)はかつてオーストラリアとアジア間の交易の中継基地として重要な拠点でかつて州都であった。20世紀の初め頃、サマライは役所、貿易や港湾の民間企業、病院、学校、州都アロタウの町とミルン湾を隔てた対岸クワト島のクワト教会ミルンベイ州(Milne Bay Province)
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